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鶏唐雑炊のあれこれ。

もう何も聞こえない  

もう何も聞こえない。
ストーブをつけた部屋は、徐々に灯油の匂いで満たされていく。
閉め切ったカーテンから透ける光は、まるで春の暖かさを纏ったように明るい。
しかしその実開けてみれば、厚く積もった雪が頼りない陽光を反射しているに過ぎないのだ。
私はもう騙されない。
君がみんな殺した部屋で、私は息の吐き方を覚える。
誕生日ケーキのろうそくを、もう一度だけ吹き消したいと思った。
もう何も聞こえない。誰の悲鳴も。私の悲鳴も。
ハッピーバースデーの歌は君に歌ってもらおう。
この静けさに、この雪の下に、たったひとり取り残された私のために歌ってくれ。
いつか雪が溶けて春が来て、窓の光が嘘をつかなくなった頃に。
もう誰も二度と目を覚まさない場所で、何にもならない私のために。
ろうそくの火を吹き消すためだけに、私は最後の酸素を吸うから。
屋根の上から雪の落ちる音が、てのひらを越えて耳に響いた。
私は耳をふさいでいた両手を離して瞼をひらく。
埃臭い部屋。光は沈黙して暗く、大勢が窓を叩くような吹雪の音。
もう一度耳をふさいでも、この手は穴だらけでなんの役にも立たない。
呼吸が浅く戻っていく。君を探して、冷たいシーツをまさぐっていく。
温度の無い君の手を握って。喉から呪文を絞り出す。さあ。
「全部嘘だよ」

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いつかどこかのマイちゃん

診断メーカーお題からTwitterで書いたものです。
https://twitter.com/sui_hope/status/1217488407862992896


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